「深い歴史たどる入り口に」ーーー大浦天主堂キリシタン博物館 学芸員・島 由季氏(12月25日)
大浦天主堂キリシタン博物館は2018年4月1日に開館しました。なかなか長崎県内の方々に博物館の存在が知られておらず、県内向けのアピールにも力をいれているところです。
博物館の運営は、開館から2024年3月まではNPO法人世界遺産長崎チャーチトラストが、2024年4月からはKTNソサエティが、カトリック長崎大司教区からの委託を受けて行っています。館長は大浦天主堂の主任司祭が務めています。所蔵資料は約1000点あり、そのうち約100点を展示資料として公開している状況です。
博物館としては、大浦天主堂境内にある2つの建物を活用しています。まずひとつは国指定重要文化財の「羅典(ラテン)神学校」、そして県指定有形文化財の「旧長崎大司教館」です。
羅典神学校は邦人司祭を育成するために開設された神学生のための校舎兼宿舎で、1875年に建設されましたので、今年で150年となります。当時は神学生たちの授業に ラテン語が用いられていたことから、このように呼ばれています。旧長崎大司教館は、司祭の執務室・住居として使用されていました。大浦天主堂より先に初代司祭館が完成しましたが、現在の建物は1915年に建て替えられたもので、ド・ロ神父の設計です。
当館の所蔵資料は大きく3つに分類されます。まず、
1)キリシタン史関係は、キリスト教布教期から潜伏期の資料で、例えば禁教の高札、マリア観音像、南蛮鍔などが挙げられます。これらは浦上天主堂(資料陳列室)からの移管や、信徒の方・かくれキリシタン組織からの寄贈によって収集 されたものです。
2)パリ外国宣教会関係は、明治初期の カトリック教理書、ド・ロ版画などがあります。日本の開国を機に、教皇庁から再布教の使命を与えられたのが、「パリ外国宣教会」という司祭たちの団体でした。彼らが持ち込んだ洋書や、布教のための教科書などが残されています。
3)長崎大司教区関係のものは、ミサ用具、祭服、神父の持ち物、神学校・出版関係の書籍などで、大浦天主堂、神学校、司教館で使用されていたものと考えられます。
これらの保存・管理、研究調査、展示による公開が学芸員の主な業務となっています。博物館職員として研究テーマに挙げているのが潜伏・かくれキリシタンの信仰 です。独自と表される彼らの信仰形態は、一見キリスト教と無関係ながらも、その 基盤は紛れもなくカトリックの教えだったと感じられるものでした。今後、研究を もとに展示解説も深めていければと思い ます。
当館は宗教、そのなかでも殉教・潜伏などの日本のキリシタンに関する深い歴史を 扱っています。当館の一つの目標は、宗教や信仰について、来館者が一緒に来た人と話す場になることです。普段は話さない、もしかしたら考えもしない宗教と自分のあり方について、キリシタンを例にし、その 歴史を知ることで深く考えるきっかけにしていただければと思います。
